悪い知らせを伝えた際にチームの士気を下げてしまった失敗:原因分析と次に活かすコミュニケーション
チームにネガティブな情報を伝える難しさ
マネージャーの役割には、チームにとって必ずしもポジティブではない情報、例えば業績の悪化、計画の変更、人員配置の見直しなどを伝えなければならない場面が少なからずあります。このような「悪い知らせ」の伝達は、受け止め方次第でチームの士気に大きく影響し、場合によっては不信感を生む可能性も秘めています。
私自身も、チームに業績に関する芳しくない数字や、想定外のプロジェクト中止といった情報を伝えた際に、意図せずチーム全体の雰囲気を重くしてしまったり、メンバーの間に漠然とした不安や不満を募らせてしまったりした経験があります。伝え終わった後に漂う沈鬱な空気や、メンバーの目の輝きが失われたように見えた時、コミュニケーションの方法に失敗があったと痛感しました。
このような失敗はなぜ起こるのでしょうか。そして、そこから何を学び、次に活かすためにはどうすれば良いのでしょうか。この記事では、私自身の失敗経験を基に、ネガティブな情報伝達における原因分析と、チームとの信頼関係を維持しながら次に繋げるコミュニケーションのあり方について考えていきます。
失敗の原因を自己分析する
チームに悪い知らせを伝えた結果、士気を下げてしまった、あるいは不信感を生んでしまった原因は、単に「悪い知らせだったから」というだけではありません。その伝え方や、伝える側の姿勢に問題があった可能性があります。自身の失敗を振り返り、深く自己分析することで、いくつかの原因が見えてきました。
考えられる原因としては、以下のような点が挙げられます。
- 情報の出し惜しみや不十分な説明: 事実をありのまま伝えることを恐れ、曖昧な表現に終始したり、必要な背景情報や理由の説明が不足したりしていた。これにより、メンバーは状況を正しく理解できず、かえって憶測や不安を増幅させてしまった可能性があります。
- 一方的な伝達: 情報をただ羅列するだけで、メンバーの反応や感情に配慮する姿勢が欠けていた。質問を受け付ける時間を設けなかったり、懸念を表明されても真摯に耳を傾けなかったりすることで、メンバーは「聞かされていない」「一方的に押し付けられた」と感じてしまったかもしれません。
- 自身の感情のコントロール不足: 伝える側である私自身が、ネガティブな情報に対する不安や焦り、あるいは責任を感じて、感情的に不安定な状態で伝えてしまった。その感情がチームに伝播し、冷静な受け止めを阻害した可能性があります。
- 次への視点の欠如: 現状の悪さや失敗だけを強調し、これからどうしていくのか、チームに何を期待するのかといった前向きな視点や、具体的な行動指針を示すことができなかった。これにより、メンバーは状況に対して無力感を感じ、モチベーションを失ってしまったのかもしれません。
- 過去のコミュニケーションの積み重ね: 普段からチームとの間に十分な信頼関係や心理的な安全性が築けていなかったため、いざ困難な情報を伝えた際に、メンバーが正直な気持ちを表明できなかったり、伝えられた情報をそのまま受け入れられなかったりした可能性も考えられます。
これらの原因は、自身の内面的な状態(不安、焦り)や、チームに対する配慮、そしてコミュニケーションスキル(説明力、傾聴力)の不足に根ざしています。特に、伝える側の心理状態は、情報の受け止め方に大きく影響することを痛感しました。
失敗から学ぶ:信頼を保ち次へ繋げるコミュニケーション
自己分析から得られた教訓を基に、ネガティブな情報伝達においてチームの信頼を損なわず、次に繋げるためのコミュニケーションのあり方を考えていきます。重要なのは、単に情報を伝えるだけでなく、困難な状況を共に乗り越えようとする姿勢を示すことです。
具体的なステップや心がけとして、以下のような点が有効だと考えられます。
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事前の準備を徹底する:
- 伝える情報の事実関係を正確に整理し、なぜこの情報が重要なのか、どのような背景があるのかを明確にします。
- 最も重要なメッセージは何なのかを定義します。
- メンバーから想定される質問をリストアップし、それに対する回答を準備します。メンバーの立場に立って、どのような点が懸念されるかを深く考えます。
- 伝えるタイミングと場所を慎重に選びます。混乱を最小限に抑え、メンバーが集中できる環境を用意します。
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誠実さと透明性をもって伝える:
- 事実を正直に、隠さず伝えます。曖昧な表現やごまかしは、かえって不信感を招きます。
- 専門用語は避け、平易な言葉で分かりやすく説明します。
- なぜこのような状況に至ったのか、可能な範囲で背景や理由を丁寧に伝えます。
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共感を示し、対話の機会を設ける:
- 情報がチームに与えるであろう影響(不安、落胆など)に共感する姿勢を示します。「厳しい状況であることは理解しています」「皆さんの気持ちを考えると心が痛みます」といった言葉で、寄り添う姿勢を伝えます。
- 一方的な説明で終わらせず、必ず質疑応答や意見交換の時間を設けます。
- メンバーからの質問や懸念に対し、真摯に耳を傾け、可能な範囲で丁寧に回答します。すぐに回答できないことでも、いつまでに調べます、といった具体的なアクションを示すことが信頼に繋がります。
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次への方向性と希望を示す:
- 現状の困難さだけでなく、これからどのように状況を改善していくのか、どのような対策を講じるのかを具体的に伝えます。
- チームに何を期待するのか、どのような協力をお願いしたいのかを明確に伝えます。チームの一員として、この状況を乗り越えるための重要な存在であることを伝えます。
- 困難な状況の中にも、学びや成長の機会があることを示唆し、前向きな視点を提供します。
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伝える側の感情をマネジメントする:
- 情報を伝える前に、自身の感情を整理し、冷静な状態で臨めるように準備します。必要であれば、信頼できる同僚や上司に事前に相談し、客観的な視点やアドバイスを求めます。
- 伝える場で感情的になりそうになった場合は、一度落ち着いて深呼吸するなど、冷静さを保つ工夫をします。
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伝達後のフォローアップを継続する:
- 情報を伝えた後も、チームの様子を注意深く観察し、個別に声をかけたり、追加の説明会を実施したりするなど、継続的なフォローアップを行います。
- メンバーが抱える不安や疑問に引き続き耳を傾け、サポートを惜しまない姿勢を示すことが、信頼関係の維持・強化に繋がります。
これらのステップは、一朝一夕に完璧にできるものではありません。何度も失敗を経験し、その都度自己分析を繰り返しながら、少しずつ身につけていくものです。特に、自身の感情を適切にマネジメントし、困難な状況でもチームへの配慮を忘れないためには、日頃からの自己理解と訓練が必要です。
誠実なコミュニケーションが未来を拓く
チームにネガティブな情報を伝えることは、マネージャーにとって常に困難な課題です。しかし、この困難なコミュニケーションの機会を、失敗を恐れずに、そして失敗から学びながら経験することは、自身の成長はもとより、チームとの信頼関係をより強固なものにする貴重な機会でもあります。
自身の失敗を正直に認め、なぜそれが起きたのかを深く自己分析するプロセスは、次のコミュニケーションへの重要な準備となります。そして、誠実さ、透明性、共感、そして次への明確な視点をもってチームと向き合うことで、たとえ困難な状況であっても、チームはマネージャーを信頼し、共に課題に立ち向かう力を発揮してくれるでしょう。
失敗から目を背けず、学びとして次に活かすこと。それが、「ごめんね」の気持ちを「そしてこれから」の行動に繋げ、より良いコミュニケーションへと成長していくための道筋です。